2026年6月25日|妊活・不妊治療について、制度の正確な解説と実務(費用・流れ・依頼先)を一次情報にあたって整理するメディア。
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不妊治療と仕事を両立する方法|手順・制度・伝え方を解説

田中 あおい / 更新:2026-06-24
不妊治療と仕事を両立する方法|手順・制度・伝え方を解説
通院のたびに有給が減っていく。上司に何と言えばいいのか分からない。仕事を辞めるべきか、続けるべきか——私自身、不妊治療中はずっとこの迷いの中にいました。結論から言うと、両立は「準備と段取り」でかなり楽になります。

この記事では、会社の制度の調べ方から働き方の選び方、上司への伝え方の例文、使える助成金、退職や休職を迷ったときの判断基準までを手順で整理しました。

所要時間の目安は、制度確認とクリニック選びの準備で半日〜数日。難易度は決して低くありませんが、一歩ずつ進めれば形になります。私が取材と自分の経験から「ここは押さえてほしい」と思った点を中心に書きます。

不妊治療と仕事の両立の現状と難しさ

6 不妊治療と仕事を両立した労働者に聞く【不妊治療と仕事との両立に取り組んだ労働者】
6 不妊治療と仕事を両立した労働者に聞く【不妊治療と仕事との両立に取り組んだ労働者】

まず実態を正確に知ることから。なんとなく「みんな苦労している」では準備の解像度が上がりません。数字で見ると、両立の壁ははっきりしています。

両立できている人はどれくらいいるか

治療経験者の26.1%が、両立できずに離職・雇用形態の変更・治療の中止を経験しています。東京都の調査では、実に96%が「両立は難しい」と回答しました。

一方で、不妊治療の両立支援制度を持つ企業は26.5%にとどまります。制度が追いついていない現実が、当事者の負担に直結しているわけです。

両立が難しい主な理由(通院回数・精神的負担・体力面)

理由は大きく三つ。通院回数の多さ、精神面の負担、そして体調・体力面の負担です。

特に通院は、排卵や生理周期に合わせて「来週ではなく明日来てください」と言われることがある。予定が立てにくいのが、仕事との相性を悪くします。

私の場合、注射のための通院が連日続いた時期がいちばんきつかった。仕事の波と治療の波が重なると、心も体も削られます。

治療ステージ別の通院回数と仕事への影響度

一般的な不妊治療の通院目安は、月2〜6日・1回あたり1〜2時間。生殖補助医療になると、時間も回数も増えます。

治療ステージ別の通院イメージと仕事への影響度
通院目安は一般不妊治療の平均値。実際は周期や体調で変動します。
治療ステージ通院の特徴仕事への影響度
タイミング法排卵日前後の受診が中心。比較的回数は少なめ低〜中
人工授精排卵に合わせた受診+処置でタイミングが読みにくい
体外受精・顕微授精採卵周期は連日通院・処置も増える

両立を始める前に確認したい前提と準備

いきなり上司に相談する前に、準備があります。順番を間違えると、伝えるときに説得力が出ません。ここでの所要時間は半日〜数日、難易度は低めです。

両立を始める前に確認したい前提と準備

所要時間と難易度の目安

必要なのは、就業規則(または社内ポータル)、母子手帳ケースに入るサイズの「不妊治療連絡カード」、そして通えるクリニックの候補リスト。道具はこれだけです。

準備が一通り終われば、「いつ・どれくらい休む可能性があるか」を自分の言葉で説明できる状態になります。これがゴールの目安。

まず会社の制度を調べる

手順としては、就業規則で「不妊治療休暇」「時間単位の有給」「時差出勤」「テレワーク」の有無を確認します。名称が違うこともあるので、人事や総務に「治療のための通院に使える制度はあるか」と聞くのが早い。

ここまでできていれば正しい:使える休暇・勤務制度の一覧が手元にある状態。うまく見つからないときは、後述の助成金や認定制度を持つ会社かどうかを人事に確認してみてください。

不妊治療連絡カードを準備する

厚生労働省が「不妊治療連絡カード」を無料で配布しています。医師が治療予定を記入し、本人が会社に提出することで、口頭では説明しづらい通院の必要性を客観的に伝えられます。

言いにくいことを、紙に肩代わりしてもらう。私はこのカードの存在を後から知って、もっと早く使えばよかったと思いました。

通院しやすいクリニックを選ぶチェックポイント

通院日数を減らすには、クリニック選びが効きます。チェックすべき点を表にしました。

通院負担を減らすクリニック選びのチェックポイント
項目確認するポイント
診療時間早朝・夜間・土日に対応しているか
待ち時間予約制か、来院から会計までの目安時間
アクセス職場や自宅から乗り換えなしで行けるか
連絡カード対応記入を依頼できるか

仕事を続けながら両立する具体的な手順

ここからが本題。準備した材料を使って、実際に両立を回す4つの手順です。1ステップ=1動作で進めます。

仕事を続けながら両立する具体的な手順

手順1 治療スケジュールを把握する

次の周期で「いつ頃・何日通う可能性があるか」を医師に確認し、カレンダーに幅を持たせて書き込みます。確定日ではなく「この週のどこか」で押さえるのがコツ。

ここまでできていれば正しい:向こう1ヶ月の通院の山が見えている状態です。

手順2 働き方の選択肢を決める(時短・在宅・フレックス)

自分の治療ステージと仕事内容に合わせて、働き方を選びます。採卵周期だけテレワークにする、注射期間だけフレックスで朝に通う、という「期間限定の使い分け」が現実的です。

治療と相性のいい働き方の使い分け
働き方向いている場面注意点
時短勤務体外受精で体力的にきつい時期収入が下がる場合がある
在宅・テレワーク通院後そのまま仕事を続けたいとき職種により可否が分かれる
フレックスタイム朝の通院を挟みたいときコアタイムに通院が重なると使いにくい
時間単位の有給1〜2時間だけ抜けたいとき残日数の管理が必要

手順3 上司や同僚への伝え方を整える

何を・どこまで伝えるかを決め、連絡カードを添えて相談します。詳しい伝え方は次の章で例文ごと紹介します。

ここまでできていれば正しい:急な通院があっても「あの件ですね」と通じる関係ができている状態。

手順4 急な通院に備えたタスク調整の工夫

「明日来てください」に耐えられる仕事の組み方をしておきます。具体的には、属人化しているタスクを共有ドキュメントに残す、締切に1日のバッファを置く、午前を空けやすい曜日を作る、の3つ。

うまくいかないときは、全部を抱えようとしないこと。私は「抜けても回る仕組み」を作るほうに頭を切り替えてから、ずいぶん楽になりました。

この手順まで進めば、急な通院があっても仕事が止まらない状態を作れています。

上司・同僚へのカミングアウトの判断基準と伝え方

『ゴールのないトンネル』不妊治療経験者95%が「仕事と両立困難」求められる理解と支援
『ゴールのないトンネル』不妊治療経験者95%が「仕事と両立困難」求められる理解と支援

いちばん相談が多いのが、ここ。『不妊白書2018』で最も要望が多かったサポートも「特に管理職への啓発・研修」でした。つまり、上司が理解していないことは多くの当事者が痛感している現実です。

伝えるかどうかの判断基準

判断軸はシンプル。「通院のために勤務調整が必要か」「制度を使うのに申請が要るか」。このどちらかに当てはまるなら、最低限の人には伝えたほうが動きやすい。

逆に、タイミング法中心で勤務に影響が少ないなら、無理に全部を打ち明ける必要はないと私は考えています。

誰にどこまで伝えるか

おすすめは「直属の上司には通院の必要性まで、同僚には休む可能性があることまで」。治療の詳細を全員に話す必要はありません。

実際に使える伝え方の例文

「現在、通院が必要な治療を受けています。周期によって急に半日ほど抜ける可能性があります。医師が記入した連絡カードもありますので、勤務調整についてご相談させてください。」

ポイントは、病名や治療の中身ではなく「勤務にどう影響するか」と「お願いしたい配慮」を主語にすること。これだと上司も具体的に動けます。

使える制度・助成金と法律で守られた権利

知らないと損をするのが、制度と助成金。会社が使える助成金を知っていれば、上司に相談するときの後押しにもなります。

使える制度・助成金と法律で守られた権利

両立支援等助成金とプラス認定制度

2024年4月から、不妊治療と仕事の両立に取り組む企業を認定する「くるみんプラス」が追加されました。

両立支援等助成金では、休暇・両立支援制度の初回利用者が合計5日以上で30万円、20日以上の連続取得で再加算30万円、最大60万円が事業主に支給されます。

両立支援等助成金(不妊治療コース)の支給イメージ
支給対象は事業主。条件の詳細は最新の公式情報で確認してください。
要件支給額
休暇・両立支援制度の初回利用者が合計5日以上30万円
20日以上の連続取得で再加算30万円
合計(最大)60万円

2022年4月の保険適用拡大による負担の変化

2022年4月から、人工授精や体外受精・顕微授精などが公的医療保険の対象になりました。これにより、自費だった頃に比べて費用のハードルは下がっています。

費用が下がるということは、「お金のために仕事を辞められない/辞めにくい」という板挟みが少し緩むということでもあります。

非正規雇用でも使える制度と工夫

派遣・パート・契約社員でも、時間単位の有給や時差出勤が使える職場はあります。雇用形態にかかわらず、まず就業規則と派遣元・派遣先の双方に確認するのが先決。

自治体の助成も使えます。東京都は両立支援制度を作る企業へ助成する「チャイルドプランサポート事業」を2018年から実施しています。

不利益取扱いの禁止・ハラスメント対策

制度の利用を理由にした不利益な取扱いや、いわゆる不妊治療に関するハラスメントには、事業主に防止措置を講じる責任があります。「治療を理由に評価を下げる」ような扱いは正当化されません。

不安なときは、後述の公的相談窓口に記録を持って相談を。一人で抱え込まないことが大事です。

両立した人の体験談と1日のスケジュール例

制度の話だけでは、実際の動きはイメージしづらい。ここでは私自身の経験も交えて、現実的な1日の流れを示します。

両立した人の体験談と1日のスケジュール例

両立に成功した人の1日の流れ

体外受精・採卵周期のある1日のスケジュール例
私の取材・自身の経験をもとにした一例です。通院時間は1回1〜2時間が目安。
時間行動
7:00朝イチでクリニックの注射・エコー(受診)
9:30出社またはテレワーク開始
12:00昼休みに体を休める
18:00退勤・翌日の通院有無を医師の指示で確認

朝に通院を寄せると、午後の仕事が崩れにくい。フレックスや時差出勤が効くのはこの設計があるからです。

男性側(夫・パートナー)の両立と男性不妊への対応

不妊の原因は男女いずれにもあり、男性側の検査・治療で通院が必要になることもあります。精液検査や処置のための通院は、男性も仕事との調整が要る。

正直に言うと、ここはまだ職場の理解が追いついていない領域です。「妻の付き添い」だけでなく「自分の治療」として休む選択も、堂々としていい。

両立がうまくいかなかったケースから学ぶこと

前述の調査では、両立が難しいと答えた人のうち約40%が働き方を変え、そのまた約半数が退職に至っています。

共通していたのは、誰にも相談できず一人で抱えていたこと。制度を調べる前に心が折れてしまうパターンが多い。だからこそ、この記事の手順1〜4を「治療が本格化する前」に回しておいてほしいのです。

退職・休職・転職を迷ったときの判断基準

【不妊治療】限界きたかも。。仕事と妊活の両立ってみんなどうしてるの?
【不妊治療】限界きたかも。。仕事と妊活の両立ってみんなどうしてるの?

辞めるべきか続けるべきか。これは正解が一つではありません。ただ、感情で勢いよく決めると後悔しやすい領域でもあります。

それぞれのメリット・デメリット

退職・休職・転職の比較
選択肢メリットデメリット
退職治療に専念できる収入が途絶える・復職のハードル
休職籍を残したまま治療に集中制度がない会社も多い・期間に限り
転職両立しやすい職場に移れる選考中は治療の説明が悩ましい

私の立場をはっきり言うと、退職は最後の選択肢に置いてほしい。先に時短・在宅・休職で「続けられないか」を試してからでも遅くありません。

キャリアプランの再構築の考え方

両立がうまくいかなくても、それはキャリアの終わりではありません。治療に区切りをつけてから戻る、雇用形態を一時的に変える、という選択肢も含めて「数年単位」で考えると、視野が広がります。

メンタルケアと相談先(公的窓口・カウンセリング)

治療が長引くと、気持ちが沈む時期は必ず来ます。我慢で乗り切ろうとしないこと。各自治体の不妊専門相談センターや、医療施設のカウンセリングを早めに頼ってください。

よくある質問(FAQ)

最後に、相談の場でよく聞かれる質問をまとめました。

よくある質問(FAQ)

よくある質問

不妊治療と仕事の両立とは?
通院や治療を続けながら、休暇・時短・在宅などの制度を使って仕事を継続することです。経験者の96%が「難しい」と答える一方、制度を持つ企業は26.5%。準備と段取りで負担はかなり減らせます。
両立にかかる費用は?
治療費は2022年4月から人工授精・体外受精などが公的医療保険の対象になり、自費だった頃より下がっています。さらに自治体の助成もあります。仕事を続けて収入を保つこと自体が、長期化する治療の支えになります。
両立の始め方は?
まず就業規則で使える制度を調べ、医師に治療スケジュールの目安を聞き、不妊治療連絡カードを準備します。そのうえで直属の上司に勤務調整を相談する——この順番で進めると、所要時間は数日程度で土台が整います。

迷っているなら、今日できる一歩は「就業規則を開いて、通院に使える制度を1つ探す」こと。そこから両立は動き出します。一人で抱えないでくださいね。

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田中 あおい

医療・健康分野専門ライター(妊活・婦人科領域担当) ・ 不妊治療経験者として複数の婦人科クリニックへの取材実績あり
医療ライター歴8年

自身も不妊治療を経て第一子を出産した経験を持つ医療ライター。クリニックへの取材と当事者インタビューをもとに、迷っている人が「次の一歩」を踏み出せる記事を書くことを心がけている。

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